第4部 まとめと今後に向けて

1. 有機生命体

 駒場寮が寮生だけの単なる寝泊まりの場ではないこと、まして学部当局が宣伝する「暴力学生の不法占拠」という貧しいイメージが見当外れであることは、お分かり頂けたと思います。駒場寮に於ける自治・自主的活動は、そこに住み、出入りする人の数だけの大小様々な要素が不可分に絡み合った上に成り立つ、創造的営為であり、かつ創造的営為であることを目指すものなのです。
 学部当局もこのことをよく理解していました。彼らは寮問題の早い段階から「居住機能は三鷹へ、サークルスペース機能は新サークル棟(キャンパスプラザ)へ」ということを謳っていましたが、これも駒場寮の学生自治に於ける様々な要素の有機的結合を解体し、寮自治を骨抜きにした上で、駒場寮を叩き潰すという方針の現れに他なりません。「廃寮」と引き換えに40億円もの募金をあてにして結局事実上破綻して改訂された「CCCL計画」や、その尻拭いとしての、いまだ予算的に完成する見込みの極めて薄い「マスタープラン」を用意せざるを得なくなったのも、そのためです。学部当局が「廃寮」攻撃によって潰そうとしているのは、寮生の寝泊まりの場としての駒場寄宿寮ではありません。「廃寮」によって狙われた最大の標的は、自治制度を背景とした学生の自主的活動の有機的繋がりに他ならないのです。
 また、(我々は可能性がないと考えていますが)仮に寮自治や自主的活動の要素が部分的に「マスタープラン」に活かされたとしても、それらは何の意味も持ち得ないでしょう。現在の駒場寮に存在している有機的結合・それを可能とした寮自治の文脈から強制的に剥ぎ取られたそれらの断片は、既に「死んだ」かけらに過ぎなくなるからです。「未来に向けた建設的な意見を」という欺瞞的な合言葉の裏で、不当にも力尽くで解体させられ、部品として抽出された、という寮の「意義」の歴史を消し去ることは出来ないからです。

2. 取り替えはきかない

 寮という名を持つ駒場寮の内実は、駒場寮固有のものであり、詳しくはこれまで述べてきた通りです。ユニークであるということは、取り替えがきかないということです。また、このような空間が学内外を通じて非常に限られていることも、これまで述べた通りです。取り替えようにも、その代替となり得るものが、少なくとも学内に存在していませんし、またかつての「CCCL計画」や今後の「マスタープラン」に於いても実現することはあり得ません。何故ならば、「CCCL計画」や「マスタープラン」は寮の意義を解体するものであり、しかも「廃寮」の不当性を正さずに駒場寮を継承することなど出来ないからです。
 学内には、学生会館や旧物理倉庫など、駒場寮以外にも学生が管理する施設があります。それらは当然、駒場寮とは異なる機能を果たしており、駒場寮の代替とはなりません。と同時に、学生自治に果たすべき役割を駒場寮と分担してきたのです。学生自治にとって他の学生関連施設が固有の意義を有し、取り替えがきかないのと同様に、駒場寮も固有の意義を有して、取り替えがきかないのです。学部当局は、「廃寮」問題を努めて駒場寮のみの問題に限定しようとしてきました。あたかも駒場寮生のみに関わる問題であるかのように宣伝してきたのです。しかし、学部当局がキャンパス「再開発」に名を借りて学生自治に大々的に介入しようとしているのは、一連の「法的措置」で暴露された学部当局の本音を紹介するまでもなく明らかです。
 今こそ、取り替えのきかない駒場寮の意義について学生一人一人が真剣に考えるべき時です。もはや代替ではないことを承知の上で、あなたは、密接な交流の場より"出会いの広場"を、苦学生でも仕送りなしで住める場より教務課2階の拡大版"美術博物館"を、あるいは手作りのカフェより"国際会議場(劇場)"を、求めますか。
 潰すのは一度で済みます。しかし二度と建てることは出来ません。学生側が毅然とした態度で駒場寮存続を訴えるべき時期にきているのです。

3. やはり学生自治の拠点

 これまでお伝えした通り、居住空間を拠点して学生の自治・自主的活動が生活と断絶されることなく行われているのが駒場寮です。拠点が確保されていることと、それが生活に密着していることが、学生自治の拠点としての駒場寮の質を規定しているのです。ここには駒場寮が学内寮であるということが決定的な要因として働いています。
 駒場寮、あるいは駒場寮的なものは、キャンパス内でこそ実現されます。ところが学部当局の「CCCL計画」や「マスタープラン」では、この点が見事に消し去られています。その計画は、学生の自主活動の確固とした拠点をキャンパスから一掃する"みんなの場所だけど誰の場所でもない"キャンパス像を描いています。そのような場を管理統制していくのは結局、管理者として立ち現れる学部当局なのです。駒場寮は、"みんなの場所でありかつ誰かの場所"です。寮生という核が存在し、同時に寮外にも開かれて、初めて学生自治の拠点たり得るのです。

4. 駒場寮体験のススメ

 駒場寮の意義について、長々と考察してきました。しかし、それらの意義は冊子という紙切れの上で終わらせるべきものではありません。駒場寮がより多くの人により多様に利用される中で、それらの意義も生きてくるのです。逆に、利用される実態がなければ、いくら紙切れ上の意義が素晴らしくても駒場寮はひからびて死んでしまいます。
 「理想ばかり書いて、実際はどうなんだ」という声が聞こえてきそうです。我々にも羞恥心が全くない訳ではありません。しかし学生自治は既製品ではないので、むしろその過程とそこでの経験が重要だと考えています。皆さんと、駒場寮の意義を紙切れ以上に共有し、発展させていきたいと思います。駒場寮が"みんなの場所でありかつ誰かの場所"だからです。私たちは皆さんにも駒場寮体験を是非お勧めします。以下に駒場寮体験の方法の一部をご紹介しましょう。

貸出施設を使ってみよう
クラス・サークルで場所が必要な時がありませんか。駒場寮には会議室やコンパルームなどの貸出施設があり、事務室での簡単な手続きで利用することが出来ます。また、短期間継続して場所が必要な時は寮委員会に相談して下さい。
・オープンスペースに行こう
駒場寮には自主的に運営されるカフェなどのオープンスペースがあります。「寮といっても行く目的もないし・・」という方は、是非一度足を運んで下さい。
・駒場寮で寝よう
24時間自由に使える駒場寮の本領(?)は夜、発揮されます。終電がなくなりそうだ、という場合は迷わず駒場寮の仮宿泊制度を利用しましょう。毎年、生協前や学生課階段で酔っ払って凍えながら始発を待つ学生が寮生に救出されて駒場寮で寝ています。
・駒場祭で頑張ろう
クラスでの駒場祭参加にクラスルームは欠かせません。文V劇場に参加するならば、準備を始めてもいい頃です。クラスルームを120%使って学生自治の祭典を成功させよう。
そして何より、
・寮生になろう
 「廃寮」攻撃の吹きすさぶ中、現在でも100人以上の寮生が駒場寮に住んでいます。学内に住んでみることで、キャンパスの見え方も違ってくるでしょう。入寮募集については、入寮募集案内のパンフ、別途ビラなどをご覧下さい。
 皆さんの駒場寮経験は、寮自治・学生自治の発展にとって意味があるだけでなく、同時並行的に「廃寮」の不当性を撃っていくものとなるでしょう。しかしそれだけではありません。その経験は、何よりも皆さん自身にとって意味あるものとなるに違いありません。
 何となく入った駒場寮での経験が、その学生に何かを気付かせ、変えてしまう契機となることがよくあります。ファミコン大好き人間が、人前で喋るのが下手な人間が、堂々と意見を述べるという自己表現をするようになる。社会について深く考え、市民運動に参加する。そもそも寮運動のために寮運動しているような人は一人もいません。個々人の切っ掛けはまちまちですが、少なくとも4年間で大学から与えられる以外のものがここに存在しているのです。個性を削り取られ、平準化されることへの無意識的な反撥が、自主管理の中で顕在化するのかも知れません。それは管理されることに馴らされてしまった我々が自主性を回復するという意味かも知れません。寮OB・OGが存続運動を支援していますが、それはノスタルジックな動機からではなく、駒場寮経験が、彼らの人生に於いてある契機となっているからなのです。

5. 今後の展望

 大学当局は現在「三鷹国際学生宿舎計画」という学寮政策をとっています。これは、駒場寮と今の「三鷹宿舎」の場所にあった旧三鷹寮「廃寮」にして、新たに三鷹に1000人規模の学生宿舎を作るというものです。
 駒場寮委員会は学生の権利を奪い、今まで駒場寮が担ってきた様々な意義を切り捨ててしまうこの学寮政策の変更を求めています。駒場寮を残し、学生の宿舎を複数設置した方が、一つの宿舎に、学生宿舎を統合してしまうよりも、より幅広い学生を救済することができます。また、駒場寮の意義はこれまで述べてきたように宿舎機能だけではありません。
 そこで、駒場寮委員会は大学当局の進めているこの学寮政策の代替案として400人振り替え提案というものを提唱しています。
 この提案は、今ある駒場寮の実質定員約400人と、現在の「三鷹宿舎」の収容人数605人とを合わせて1000人規模の宿舎としてはどうだろうかといった内容のものです。ちなみに400室分の「三鷹宿舎」の建設はここ6年間、予算がつかず停止されたままになっています。そもそも、計画はバブル時代の考え方を引きずっており、「スクラップ&ビルド」といって、古いものはどんどん壊して、建てるという考えのもとに作られたものなので、不況の最中、予算がつかないのは当然と言えるでしょう。そして、この提案は、自治会の最高意志決定機関である代議員大会でも可決されました。さらに、2001年2月22日に行われた自治会と大学当局との正式な交渉の場である学部交渉において、91年の「廃寮」決定と同様に教授会で決定すれば実現可能であることが確認されています。
 そして、この提案が実現されれば、これまであげた駒場寮の意義を残しつつ、今ある「三鷹宿舎」と共存し、ともにたりない部分を補い合うことができます。さらに、この提案は、大学における学寮の意義を考察した上で、大学における新たな学寮政策を提案するという大きな視点からの提案でもあります。
 駒場寮委員会はこの提案を軸に、学内での話し合いによる解決を目指す教官達と話し合って、双方が納得できる形での解決を求めていきます。是非、皆さんもこの新たな学寮政策に関する議論に参加してみてください。

 駒場寮は、あなたに開かれています。「必要とする人に駒場寮を!」駒場寮の自主管理は、今日も続きます。

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